【はじめに】

賃貸物件の退去後に行われる「原状回復工事」。
この工程は、大家さん・管理会社と職人の連携がスムーズであるほど、コストも仕上がりも納得のいくものになります

ところが実際の現場では、「そんなつもりじゃなかった」「それは聞いていない」といった“認識のズレ”や“誤解”が起きやすいのも事実です。

今回は、原状回復工事でよくある誤解とその解決策について、実際の現場の声をもとに5つ紹介します。


✅ 誤解①:「全部やってくれると思っていた」

▶ 大家の思い:

「原状回復って言ったら、一通りやってくれるんでしょ?」

▶ 実際は:

原状回復には基本的な範囲(クロス、床、清掃など)がある一方で、
・エアコンの分解洗浄
・ガスコンロの修理
・鍵交換
などは別途費用・別業者対応となることが多いです。

▶ 解決策:

  • 最初の見積もり時に「どこまでが対応範囲か」を明確にする
  • 大家側は「やってもらえると思い込まない」、職人側は「黙って見過ごさない」

✅ 誤解②:「すぐ着工できると思っていた」

▶ 大家の思い:

「退去したから、明日から工事に入ってもらえるよね?」

▶ 実際は:

職人には他の現場が入っており、即日対応は難しいことも。
特に2〜4月、9月などの繁忙期は1〜2週間待ちも当たり前です。

▶ 解決策:

  • 退去予定の時点で事前相談をしておく(できれば2週間前)
  • 職人も「今からだと○日後から入れます」と明確に伝える

✅ 誤解③:「“ついでに”頼めばサービスしてくれると思っていた」

▶ 大家の思い:

「クロス張替えるついでに、あの棚も直してくれない?」

▶ 実際は:

“ついで”といっても別の職種・別の技術が必要なこともあります。
無理に対応すると、仕上がりや安全性に影響が出ることも。

▶ 解決策:

  • 作業内容が追加される場合は、都度見積・相談を行うのがマナー
  • 職人側は「できる/できない」を明確にしつつ、代替案を出すと信頼につながる

✅ 誤解④:「見積もりは正確な確定価格だと思っていた」

▶ 大家の思い:

「見積もり出したんだから、あとから金額が変わるのはおかしい!」

▶ 実際は:

入居中に確認できなかった下地の劣化、隠れた損傷などにより、やむを得ず追加費用が発生することも

▶ 解決策:

  • 見積もり時に「現地確認できていない部分は追加の可能性あり」と明記
  • 写真やLINEで状況を逐一共有し、合意の上で追加作業へ

✅ 誤解⑤:「原状回復は“新品のように”戻すことだと思っていた」

▶ 大家の思い:

「せっかくだからピカピカにしてほしい」

▶ 実際は:

原状回復の定義は「入居前の状態に戻す」であり、リフォームやリノベーションとは違います
築年数や素材の経年劣化も考慮されるべきです。

▶ 解決策:

  • 新品レベルの仕上がりを希望する場合は、別途「グレードアップ工事」として見積依頼
  • 職人も「原状回復とリフォームの違い」を丁寧に説明しておく

【まとめ|“誤解”は放置せず“確認”が大切】

原状回復工事は、職人と大家・管理会社の相互理解と事前確認があってこそ、スムーズに進みます。
以下のような姿勢が、信頼関係を育てます。

大家・管理会社が気をつけたいこと職人・業者が気をつけたいこと
要望は具体的に伝える作業範囲・対応可否を明確に伝える
工事スケジュールに余裕を持つ繁忙状況を説明し、調整策を示す
「原状回復」の範囲を理解する不明点や追加作業は必ず事前に相談する

【最後に】

「言ったつもり」と「聞いてない」の溝は、後からのトラブルの元です。
だからこそ、最初の見積もり段階で細かく話す・書面に残すことが、
長い目で見て双方のメリットにつながります。