なんとなく始めた仕事が「自分の道」になった──高梨さん、内装職人21年の歩み

「なんとなく入った会社が、原状回復の施工会社だったんです。」

職人歴21年。現在は埼玉県川口市を拠点に、「高梨内装」として一人親方で内装工事を手がける高梨さんは、そう振り返ります。



▲取材中、これまでの仕事を笑顔で語ってくれた高梨さん

「最初は、深く考えてたわけじゃなかったんですけど、いつの間にか、もう20年以上経っていて。“これが自分の仕事なんだな”って、自然に思えるようになってました。」

気づけば、キャリアは2桁に。独立してからも11年が経ち、クロスや床張りといった内装全般の施工をひとりで手がけています。


「昔は、白いクロスだけを貼っていた」

高梨さんが職人として最初に経験したのは、賃貸物件の原状回復。壁紙はほとんどが白の無地で、クロス職人としての技術を突き詰めるというよりは、”安定した作業”のような日々が続いていたそうです。

「でもだんだん、もっと色んな現場を自由にやりたいと思うようになってきて。新築の戸建てとか、注文住宅とか──いろんな素材、いろんな仕上げ方。“どうせなら全部覚えて、全部やれるようになりたい”って、そう思ったんです。」


▲遊び心のある仕上がり。レンガ柄のクロスで階段周りを印象的に演出

今では、クロスだけでなく床材、下地処理まで一式を丁寧に手がける高梨さん。輸入クロスや柄物のプリントクロスなど、扱いが難しい素材にも積極的に挑戦してきたそうです。

「最近はあんまりご依頼がないですけど、輸入クロスとかも貼ってました。幅が違ったり、塗装面が繊細だったりして、日本のクロスとはまったく違う。扱いも、下地の準備も、ぜんぶ変わってくるんですよね。」

 「この仕事は自分にとって“天職”だと思っています。綺麗に仕上がったときはやっぱり嬉しいですし、現場でお客さんとやりとりするのも楽しいんですよ。」

クロスや床を貼るという仕事は、完成すればすぐに「目に見えるかたち」で成果が表れる。お客様に「ありがとう」と言われる瞬間も多く、それが原動力になっているようです。


「職人って、たとえば子どもが見て“かっこいい”って思うかっていうと…うーん、多分思わないんじゃないかな(笑)」

そう笑っていた高梨さんの言葉が印象に残ります。
一見地味で、派手さのない仕事かもしれない。けれど、自分が納得できる仕上がりを地道に重ねていく。目立たなくても、誰よりも手を抜かない。


▲フローリング調の床材を使用した内装。施工の丁寧さが光る

“この仕事が天職”という言葉には、地に足のついた信念と静かな誇りが込められていました。